元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜

Epilogue 幸せはいつもここに

 それから、季節は巡り。
 翌春、満開の桜に祝福されるように、私たちは結婚式を挙げた。
 紺色の礼服に身を包んだ大輝は、見惚れるほどにかっこいい。

 そんな私のお腹には、新しい命が宿っていた。

 秋の初めに私の妊娠が発覚してから、大輝と私は籍を入れ、大輝と息子は養子縁組を組んだ。
 結婚式の準備も、妊婦検診への付き添いも、大輝が奔走してくれた。
 大輝は全部、「俺も関係あることだから」と私の負担にならないようにもしてくれた。

 ◇

 新しい命を迎えた佐岡家は、今日も幸せで溢れている。

「やばい、可愛い。嫁も可愛いのに赤子も可愛い。どうしよう、可愛いが溢れてる」

「パパ、赤ちゃん独り占めしちゃダメ。あと、僕も可愛いよ」

 サンルームのソファに座り赤ちゃんを抱えた大輝は、すっかりお兄さんになった颯麻に言われ、たじたじになっている。

「颯麻は“かっこいい”から。違うんだよ」

 ぷうっと頬をふくらませる颯麻に、大輝は言い訳をする。けれどすぐに、颯麻は赤ちゃんを見て頬をニンマリさせた。

 私はそんな三人の姿を、リビングのソファからのんびりと眺めていた。

 産後、大輝や父母など、たくさんの人の手を借りた。さすがに颯麻の面倒もとなると、一人じゃとても手が回らなかった。

 人は一人じゃ生きていけない。
 だから、頼ってもいい。それは甘えじゃない。
 一人で立てなくたって、大丈夫。支え合って生きていけばいい。
 それが『自立』なのだと、あの日の大輝が教えてくれたから。

 素直に厚意を受け取り、頼れるようになったのも大輝のおかげだ。
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