パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこする大輝。
 「可愛いね」と連発する、息子。

「ありがとう」

 自然に口からそう漏れて、大輝がこちらに視線を向けた。

「何が?」

「大輝は私に、たくさんのものをくれるなって思ったから」

「いいんだよ、だって家族だろ?」

 そう言って、大輝は笑う。

「家族っていいな。温かくて、優しい。俺、家族に漠然と憧れてたけど……幸せだ。今、すごく」

 言われ、涙が溢れそうになる。
 私だって、幸せだ。
 こんなにも満たされている。

 視界の端に、不意に仏壇が映った。
 大輝のご両親が、その端で微笑んでいる。

「うん、ずっと、家族だよ。これからも、ずっと家族として生きたい」

「当たり前だ。俺たちは、ずっと家族だ」

 大輝はそっと立ち上がり、私の横に腰を下ろした。そのままちゅっと、私の頬にキスを落としてくる。

 すると颯麻が無理やり私と大輝の間に割り込んで、「僕もー」と自分の両頬をツンツンする。
 私と大輝は目くばせをして、同時に颯麻の頬にキスを落とした。

 すると颯麻は満足そうに笑って、赤ちゃんの頬にキスをする。

 優しさの連鎖は、お日さまみたいな匂いのこの家が呼び寄せてくれるんだと思う。

 私はもう一度、大輝と颯麻とすやすや眠る赤ちゃんに、優しいキスを落とした。
 ずっと幸せな家族でいようと、誓いを胸に刻みながら。


〈終・番外編へ続く――〉
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