パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 夢中になって求めあい、抱きしめ合って何度果てただろう。
 梓桜はぐったりとしたまま大輝の腕枕に頭を預けていた。そんな愛しい彼女が眠気からか愛しさからか、トロンとした表情でこちらを見上げるから、大輝は思わず笑みをこぼした。

「笑ってる」
「幸せなんだよ」
「……私も」

 そんなありきたりな会話すら愛おしい。
 大輝の心には、ずっとずっと埋められなかった穴がある。
 それが、今、ぽっと埋まって、全て満たされたような。

 身体は疲れてぐったりしてるのに、心が満たされて幸せだ。

 梓桜がこんな顔を見せるのは、大輝だけ。

 そんな特別感のある事実にも、大輝の顔はだらしなく垂れる。

「あー、颯麻、大丈夫かな。ちゃんと寝たかな」

 あくびを零しながら梓桜がそう言って、大輝は苦笑を零した。

「……ごめん。でも、気になっちゃって」
「いや、そうだよなぁ……梓桜は、母親なんだもんなぁ」

 言いながら、大輝の心には憎しみが生まれていた。

 好きだった人が、突然目の前に現れた。
 けれど、彼女は子供を連れていた。しかも、あんな最低な(ヤツ)との。

「大輝?」

 声の方を見下ろすと、キョトンとした彼女と目が合った。

「大丈夫? 険しい顔」
「あー……ちょっと、嫉妬してた」

 胸の内を悟られたくなくて、苦笑いを浮かべた。
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