パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 噛みつくようなキスを何度も落とし、気持ちの高ぶりが最高潮に達したころ。
 彼女からの反応が無くなり、そっと唇を離した。

 寝てる。

 寝息を立てて眠る彼女の頬を、そっと優しくひと撫でして、大輝は彼女の上から退いた。

 ああ、生殺し。でも。

 愛しくて仕方がない。彼女がこんな無防備な状態で、自分とのキスに酔いながら眠りについてくれたのだと思うと、幸せが溢れて仕方ない。

 大輝はそっと梓桜の頭を自身の腕に乗せた。
 そこに感じる重み。こんなに華奢な体で、一人で颯麻を抱えて生きてきた彼女を、逞しいと思う。

 大輝は梓桜と再会した、あの日を思い出した――。
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