パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 言いながら、大輝はおどけて私に向かって敬礼を切る。
 息子も真似をして、大輝に敬礼を向けた。

「お、やっぱり優秀~」

 大輝はそう言って、息子の頭をわしゃわしゃと撫でる。

「救助隊と消防士って、違うの?」

 聞けば、大輝は立ち上がりこちらに笑みを向ける。

「同じっちゃ同じなんだけど。消防士はあっちの紺色の服で、その中でも訓練受けたヤツは救助隊になれる。ちなみに、俺は救命士の資格も持ってるから救急車も乗るんだ」

「救助隊は、オレンジ色なんだ……」

「そ。ちなみに、救命士はグレー。で、俺は日によって所属する隊を変えるタイプ。基本は消防隊なんだけど、まあ穴埋め要因だな。今日はイベント勤務だけど、所属は救助隊。だからオレンジ」

 ケラケラ笑う大輝。
 その笑顔は、やっぱりあの頃と変わらない。

「あ、隊長ちょっといいっすか?」

「あ、悪い。梓桜(あずさ)、また後でな。颯麻くんも」

 後輩らしき消防士さんに呼ばれて、大輝は行ってしまった。
 向かった先でも、大輝は笑顔で仕事をこなしている。

「隊長、いくら颯麻くんのお母さんが可愛いからって、既婚者狙っちゃだめっすよ」

「ちげーよ、彼女は高校の同級生だっての!」

 聞こえてきたそんな会話に、ちょっとだけ頬が熱くなる。

 きっと彼はあの頃と同じように、お日さまみたいな笑顔で、皆を照らしているんだ。

 優しくて爽やかで、ムードメーカーで頼りになる。そんなお日さまみたいな大輝には、この街を・人を守るこのお仕事がぴったりだと思った。
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