パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 暴れ続ける息子を抱えたまま、どうにか列から離れた。
 けれど、息子を泣き止ませるにはやっぱり消防車しかない。

 私は停まっていたいたレスキュー車を、息子と一緒に眺めるという強硬手段に出た。

「これ、なーんだ?」

 大泣きしていた息子も、目の前に現れた大きな赤いボディに泣き止む。

「これはー……」

「レスキュー車だよ。災害救助車」

「レスキュー車!」

 さっきまで大泣きしていたとは思えないくらいに、息子はけろっとしてレスキュー車に手を伸ばす。

 すると、その手にさっとハイタッチするように大きな手が伸びてきた。

「颯麻くん、イエーイ!」

大輝(だいき)!……、ごめん」

「いやいや、全然! そうか、颯麻くんは救助車も好き、と。やっぱり優秀だ」

 ニカっと笑う大輝。
 最後まで申し訳ない。

「レッドサラマンダー!」

「それは日本に一台しかないからなあ、俺も乗ったことないよ」

「スクラムフォース!」

「俺も見てみたいよ。まだ映像でしか見たことなくて」

 息子の知ってる消防自動車の知識に関心しながら、アハハと笑いながら答えてくれる大輝。さっきまで泣いていた息子まで笑顔にしてしまう大輝は、やっぱりお日さまみたいだ。

「レスキュー車、乗ってみるか?」

 大輝はそう言うと、私の腕からさっと息子を抱き上げる。それから、レスキュー車の後ろ、銀色の台の部分に座らせてくれた。
 しっかりと、その身体を支えながら。
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