元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
「ポンプ車ー! 見るー!」

 案の定、颯麻は叫び出す。 
 静かにしてくれと心の中で頼みながら、誕生日プレゼントにもらったミニカーを鞄から取り出して渡した。

 すると、息子は入り口で見たばかりの消防ポンプ車を思い出したのか、「いっしょー!」と大声を上げる。周りの視線は気になるけれど、先程よりも大人しくなっただけマシだろう。

 しばらくすると、消防士さんたちが入ってきて、今日の行程を説明してくれる。

 私は息子を抱っこしたまま、一番後ろに座っていたのだが、イベントで会った消防士さんが息子のことを覚えていて、しゃがんで声をかけてくれた。

「颯麻くん! こんにちは」

 息子は照れてしまったらしい。ふいっと視線をそらし、窓の方を向く。

 消防士さんは「忘れられちゃったかー」なんて言いながらケラケラ笑い、私は苦笑いを浮かべる。けれどおかげで、颯麻は大人しくなった。

 説明が終わると、いざ消防署の見学へ。立ち上がり、部屋を出る。颯麻が抱っこをせがんだので、抱き上げた。

 列の最後尾になったけれど、後ろから消防士さんがニコニコしながらついてきて、時折颯麻に手を振ってくれた。
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