元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 指令室や仮眠室、給食室。
 ――様々な部屋を見学しながら、消防士さんの日常を垣間見る。

 大輝もこんな風に生活しているのかな、なんて想像を巡らせたりもした。すると、通りかかった部屋の奥に、思い浮かべた当人の姿を見つけた。

 この間とは違う、紺色の隊服を身に纏い、何かの資料に目を通す彼。その真剣な眼差しに、ドキリと胸が鳴る。

「ここは事務室です。訓練の計画を立てたり、書類の整理をしたりします。――まあ、いわゆる事務をする部屋ですね。そのまんま!」

 案内係の消防職員さんの話が、参加者の笑いを誘う。

 その声に、事務室内の消防士さんたちも気づいたらしい。こちらを見て、にこやかに手を振ってくれる。

 もちろん、大輝も。

 バチっと目が合ってしまったような気がして、慌てて息子に視線を移した。息子は腕の中で、持ってきたおもちゃのタイヤを退屈そうにくるくる回していた。
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