パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「本当に良かったの?」

 息子と橋本さんを見送ったその場所で、取り残された私は大輝を見上げた。

「いいの。橋本は子供すんげえ好きだからさ、この前のイベントの時は非番で、泣いてたくらい」

「でも、私のこと元カノって知ってたよね……」

「あのイベントの後、他の奴に梓桜(あずさ)のこと根ほり葉ほり聞かれちまってさ。気分悪くさせてたらごめん。でも、そうしないと奴らの追及が止まらなくて……」

 後頭部をぽりぽり搔きながら、大輝は頬を染めて言う。

「で、気付いたら俺が既婚者の元カノにアタックしてるって変な噂になって、否定し続けたら『消防車両にやたら詳しい颯麻くん』と『その母親は俺の元カノ』って部分だけ広がっちまって」

 思わずふふっと笑ってしまった。

「笑うなよ」

「ごめん。でも、大輝らしいなぁって思ったの」

 隊長だったり、オールラウンダーだとか慕われているのに、後輩とはそういう話ができるくらい近い距離にいる。
 そんな大輝を、大輝らしいと思ったのだ。
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