パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
梓桜(あずさ)も、頑張ってるんだな」

「大輝に比べたら、まだまだだけどね」

 言いながら、顔の熱が引いたことを確認して、大輝を見上げた。
 ニカッと、太陽みたいな笑顔の大輝と目があった。

「笑顔、よく似合ってる」

 その一言が、大輝からのエールのような気がして。
 また熱くなった目頭をそっと指で押さえて、頑張って笑顔で踏ん張る。

「ありがと」

 私も、大輝みたいになれるように。
 前向きになれた気持ちを大切に、忘れないように、胸に焼き付ける。

「ポンプ車ー!」

 不意に、また元気な息子の声が車庫内に響く。

「颯麻くん、本当に好きなんだな」

「おかしいよね。そんなに言葉も話せないくせに、妙に消防自動車にだけ詳しくて」

 言いながら、周りの消防署見学の参加者が徐々に減っていることに気づいた。
 そういえば息子はまだ橋本さんに任せたままだ。

「橋本さんもお仕事中だもんね、そろそろ迎えに行ってくる!」
< 41 / 249 >

この作品をシェア

pagetop