パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 慌てて身体の方向を変えると、「待って!」と肩を叩かれた。
 振り返ると、大輝は私に紙を差し出す。

「これ、持ってって」

 大輝の名刺だ。
 名前の下に、手書きで電話番号と、メッセージアプリのIDが書かれていた。

「片親だと、大変なこともあるだろ? いつでも頼っていいから」

 大輝はそう言って、私に無理やり名刺を持たせた。

「悪いよ……」

 名刺を返そうとすると、大輝はその手をさっと引っ込めた。

「いいの。ほら、この街を守るのが俺の使命。つまり、この街に住んでる梓桜(あずさ)の手助けをするのも、俺の使命だから、さ!」

 お道化るように両手を上げて、ヘラヘラと笑う大輝。

 ああ、ずるいなあ。
 そう思いながらも、大輝にもらった名刺をバッグのポケットに仕舞った。
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