パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 ◇

 私が大輝と出会ったのは、高校1年の春。
 同じクラスで私の前の席だった大輝は、入学式の後のホームルーム前に、気さくに声をかけてきてくれた。

「ねえ、前見える? 俺の後ろじゃ見えないよな? 席、代わろうか?」

 名簿順の座席では、『佐岡』の大輝の後ろが『塩沢』の私だったのだ。
 当時から小柄だった私と、当時から背が高く背中も広かった大輝。
 ちょうどクラスの真ん中の列の、一番後ろの席だった。

「あ、うん……」

 なんて、適当に返答をしている間に、クラス担任がやってくる。
 すると大輝がさっと、真っ直ぐに手を挙げる。

「先生、後ろの人と席変わってもいいっすか? 彼女、俺の後ろだと前見えなさそうだから」

 名前もまだ知らない私を気遣って、そう意見してくれたのだ。
 さっそく席を交換し、彼の前の席になる。

「ありがとう……!」

 振り返りお礼を言うと、「おう!」とだけ、返してくれた。
 爽やかに、満面の笑みを浮かべた彼は、とても大人っぽく思えた。
 けれど、右下にあるえくぼが、ちょっとあどけないとも思った。
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