元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
「――ごめんな」

「ううん、謝らないでいいよ」

 こんなときでも、大輝は見せてくれる。
 まるで、私を安心させようと、俺は大丈夫だからと言っている気がした。

 こんな大輝だから、お日さまみたいなんだと思った。

 きっと、大輝が笑うのは、周りの人のため。
 お葬式の時にも笑顔だったのは、泣きじゃくる妹さんを安心させ、私たちを安心させるためだったんだ。

 本当は悲しいはずなのに。
 たくさん泣いていいはずなのに。

 無理をして笑う大輝が、本当は泣いている気がした。
 だから。

「大輝、いつも人のことばっかり」

 言えば、大輝は「へ?」っと目を瞬かせる。

「大丈夫じゃないときは、笑わなくていいんだよ」

「大丈夫だよ、俺は……」

 言いかけた大輝の表情が一瞬曇る。
 大好きだから、頼って欲しかった。

「お葬式の時、妹ちゃんに『大丈夫だ』って何度も言ってたの、不安にさせないようにでしょ? クラスメイトの手前、叔母さんの手前、笑ってるのもそういうことなんじゃないの?」

「そんなこと――」

「大輝の本当の気持ち、大輝の本当の心、私には見せてくれていい。私がこんなに悲しいのに、大輝が悲しくないわけないもん。無理して笑うのはしんどいでしょ?」

「梓桜……」

「泣いていいよ、私の前では。……恋人だもん。頼ってほしい。頼りないかもしれないけれど――」

 言っている間に、大輝の手が伸びてくる。
 私はそのまま、ぎゅっと抱き寄せられた。
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