元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 大輝の腕の中。
 おずおずと、彼の背中に手を伸ばした。

「泣いていいよ。恋人だから。大輝が引越すまでは、私に大輝の恋人でいさせてよ。大輝の辛いとか悲しいとかそういう気持ち、分けてよ」

「ん……」

 頭の上から降ってくる、力ない返事。
 私は彼の背中に伸ばした腕に、力を込めた。

「楽しいことなんてなくていい。無理しなくていい。ただ、大輝のそばにいさせて?」

 途端に、大輝の抱擁の力が強くなる。

「梓桜……、俺、お前のこと、すごい好きだ」

「大輝……」

 小刻みに震える背中。
 右肩に乗せられた大輝の頭から、洟をすする音が聞こえる。
 押し殺した大輝の嗚咽の声が、静かな部屋の中に響いた。
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