パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 年の瀬。
 父は歳にも関わらずみるみる回復し、心配していた言語障害や半身不随はない。
 ただ、右足が動きにくいようで、リハビリ病棟に移った。

「本当は退院して、年末年始は家で過ごしたかったんだけどなぁ」

「病院食なら太らなくていいじゃない」

「むしろ痩せちまうよ」

「痩せるくらいで丁度いいんじゃないかしら?」

 病室でそんな軽口を叩くほど回復した父と母の様子に、私の心も軽くなる。

「クリスマスもお祝いしたかったなぁ、颯麻くんにプレゼントを――」

 父が言いかけて、颯麻が「プレゼント、もらったー!」と叫ぶ。
 颯麻はサンタさんに、パトカーのミニカーをもらったのだ。

「そうかそうか」

 父がそう言って笑う。
 父も母も笑ってくれるなら、私がここにいる意味も少しはあるのかもしれない。
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