パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 やがて一月初旬に父は退院することになった。
 その頃には、私も少しずつ時間の使い方を変えて、自分たちの食事は作ったり、休日に洗濯をまとめておこなったりと、家事も積極的におこなった。
 母の負担にならないように、だ。

 父はリハビリの甲斐あり、手すりや杖があれば歩けるまでに回復した。

 退院までに、足が悪い父の為、二階にある両親と一階で寝ている私たちの寝室の場所を交換することになった。
 一階の客間には、介護用のベッドを購入して母とともに設置を手伝った。
 颯麻も、自分の洋服やおもちゃを運ぶのを手伝ってくれたりした。

 そんなバタバタとしたまま迎えた父の退院。
 久しぶりの我が家に、父は嬉しそうに笑う。

「よし、今日から働くぞ~」

 そう言って、さっそく居間でパソコンを開いている。

「食事は塩分控えめにしますからね!」

 そう言う母も、心から笑っているようだ。

 私も頑張ろう。
 仕事を頑張って、この家を出て行けるようになるまで。
 二人が、二人でゆっくり過ごせるように。

 そんな今年の誓いを胸に、一月の澄み切った青い空を見上げた。

 少しは大輝に近づけたかな。
 頭の中には、連絡先も知らない大輝の笑顔が浮かんでいた。
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