元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 けれど、その三十分後。

「もう寝たかな、颯麻……!?」

 隣に寝かせた颯麻から感じた、明らかな異変。
 身体が強張り、ひっくひっくと動いている。

 けいれんだ!

 咄嗟にそう思ったけれど、どうしていいか分からず頭が真っ白になる。

 あれだ、救急のハンドブック! 確かリビングの棚!

 バタバタと慌てて階段を駆け下りると、そんな私に母が「どうしたの?」と声をかける。

「颯麻がけいれんしてるの!」

 救急ハンドブックを探しに行こうとした私を、母は止めた。

「時間測ってるの!? 五分以上は危険なサインよ! とにかく、梓桜は颯麻くんのところに戻りなさい!」

 叱られるように言われ、慌てて颯麻の元に戻る。
 颯麻はまだその身体をぴくぴくさせている。

「颯麻、大丈夫かな……」

 見たことのない息子の姿に、胸が張り裂けそうになる。
 どうしよう、どうしよう、このまま死んじゃったら――。

「言ったでしょ、時間測るの! ほら、ストップウォッチ!」

 後ろから駆け付けた母に言われ、スマホを操作する。

「五分以内なら大丈夫。明日、休日外来に行けばいいわ」

「お母さん……」

「大丈夫よ、あなたも小さいころは、よく熱出してひきつけ起こしてたから」

 その頼もしい一言に、少し冷静になれた。
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