パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 病院に着き、颯麻が運ばれてゆく。
 私は颯麻に付き添って、共に処置スペースに入った。

「熱性痙攣(けいれん)だと思うけれど」

 軽く息子の身体を触った医師はそう言って、脳波の検査のため外で待つように言われた。

 しばらくして呼ばれた時には、息子は顔を苦しそうに歪ませていた。
 そんな息子を見て、やっと胸をなでおろす。

 ――良かった、生きてる。

 身体が急に重くなった感じがして、それだけ気を張っていたのだと気づいた。

「脳波に異常はありませんでした。意識が戻る時に嘔吐があり、――」

 医師からの説明を聞きながら、それでも生きていて良かったと心から思う。

 颯麻の熱は四十度にもなっており、髄膜炎の可能性もあるからと検査入院をすることになった。

「お母さん、このまま入院手続きしてよろしいですか?」

 看護師さんに聞かれて、「はい」と答える。
 諸々の手続きを済ませると、すやすやと眠る颯麻の寝顔を眺めた。

 ずっとそばにいてあげるからね。
 そう、思ったのだけれど。

「今、そばにいてあげたい気持ちはとても分かります。でも、起きたらきっとお子さんはお母さんを離してくれませんよ。だから、今のうちに入院の準備をして、お母さんも一緒に泊まれる準備をしてきてください」

 看護師さんの言っていることはもっともだ。
 颯麻は、このまま病室に運ぶとのこと。
 私は看護師さんに「はい」と、颯麻から離れがたい気持ちを抑え、処置室を後にした。
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