パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 金曜日。
 出席停止の期間を経て、息子が保育園に登園できるようになった。
 仕事終わり、息子を迎えに行く。

「久しぶりの登園でしたけれど、みんなとも仲良くできましたよ!」

 先生に言われて、ほっと安堵の息を漏らす。
 職場でも「お互い様よ」と、私の仕事の休みを補完してくれた皆には感謝しかない。

 もっと頑張ろう。こういう、不測の事態があっても一人でできるように――。

 そう思うとともに、私は浮足立ってもいた。

 大輝の『快気祝い』が明日に迫っている。
 ちょうど、大輝は仕事が休みだという。

 場所は、我が家になった。

[おじさんの様子も気になるし]

 救命士として父を救ってくれた大輝からの申し出に、父の元気な様子を見せてあげたいという気持ちが高まった。

 それで、父母に大輝が高校の同級生で、父を運んでくれた救命士でもあること伝えた。すると、母も父も「ぜひ我が家に」と、大輝を歓迎する気満々になってしまったのだ。

 帰宅すると、母がまだキッチンで明日の大輝歓迎メニューを考えていた。

「大輝くん、煮物は好きかしら?」

 さあ? と首を傾げると、母はまた悩みだす。

「消防隊員なんだから、きっとたくさん食べるでしょうね」

 私はその横をすり抜け、昨日の間に作っておいた作り置きのおかずをチンしに向かった。

「颯麻、ごはん食べようね~」

 息子を椅子に座らせる私のその声に、母が「ごめん、集中してた」と慌てて退いてくれた。

 そのくらい、母は大輝のことを歓迎しようとしてくれているのだ。

 明日は、大輝がこの家の中にやってくる。
 想像すると、私もドキドキして、わくわくして、ちょっと緊張してきた。
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