パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「あ、これ、どうぞ!」

 部屋に戻る父を支えながら、大輝が母に紙袋を手渡した。

「あら、いいの?」

「はい、お邪魔するだけだと悪いので!」

 大輝は笑いながら、部屋の中に入っていく。そんな会話を不思議な気分で見守りながら、私も続けて部屋に入った。

 父が椅子に座ったのを見届けると、大輝は私にも紙袋を渡してくれた。

「上の小さいのが颯麻くんへの、下の箱は梓桜への快気祝い、な」

「いいの? っていうか、私は元から元気だけど――」

「いい。頑張ったのは梓桜も一緒だろ?」

 笑顔でそう言ってくれる大輝に、胸がじーんとなる。

 そうか、私も頑張ったんだ――。

 大輝の言葉が、なぜか胸にすっと入ってくる。泣きそうになって、慌てて目をぱちぱちさせてごまかした。

「っつーか、今日の本題はそれだからありがたくもらっといて! 颯麻くんに何もなくて、本当によかった」

 大輝はそう言いながら、母に促された椅子に座る。父が床に座るのは厳しいからと、ダイニングに全員が座っている。
 私は大輝の隣に、颯麻を膝に乗せて座った。
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