パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「ママ、これー!」

 大輝が渡してくれた紙袋を、不意に颯麻が指差した。

「颯麻くん、自分のものって分かってるんだな。賢い!」

 と、大輝が笑う。

「梓桜、開けてあげてよ。颯麻くん、喜んでくれるかな?」

「え、あ、うん」

 促され、袋から小さいほうの箱を取り出した。

「開けるー!」

 颯麻はそう言って、必死に包み紙を開こうと手を動かす。やがてびりびりになった包み紙の中から出てきたのは、消防自動車の描かれた箱だ。

「はしご車ーーー!」

 颯麻は箱を手に、私の膝の上でぴょんぴょんと跳ねる。

「開ける! ママ、開ける!」

「はいはい、分かった」

 半ば押し付けられるように手渡された箱を開けてやる。はしご車のミニカーが出てくると、颯麻は「やったー!」と両腕を上げた。

 それからさっそく、テーブルにはしご車を走らせて遊び始める。

「かっこいいだろう、はしご消防車」

 隣に座っている大輝はそう言いながら、颯麻の手元を見つめる。その愛おしそうな視線に、なぜか鼓動が少し早くなった。

「かーっこいい!」

 そう言いながら「ぶーん」とはしご車を走らせる息子に、「ありがとうは?」と促した。けれど颯麻ははしご車に夢中で、こちらの話に聞く耳も持たない。
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