パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「なんかごめんね、気を遣わせちゃって……」

「別に気を遣ってるわけじゃない。消防署来てくれた時に、消防ポンプ車と救急車持ってただろ? だから、はしご車選んだんだけど。嬉しそうで、俺も安心した!」

 言いながらこちらに向けられた大輝の笑み。
 ドキリと胸が鳴った。

「あら、これ私の好きな駅前のお店のおまんじゅうじゃない!」

 キッチンから、母の声が聞こえる。

「ほら、梓桜も開けていいぞ!」

 母の声に呼応したように大輝が言う。私は胸のときめきをごまかすように、袋の中に目線を移した。

「あ、これ!」

 入っていたのは、少しお高いお店のマカロン。いつか買えたら、なんて思っていたけれど、貯金中の私に手が出るわけもない。

「梓桜、マカロン好きだったの覚えてたから。今も好きか分からねーけど――」

「好き! ありがとう!」

 大輝に向かって思わずそう言うと、なぜかふいっと顔を逸らされてしまった。

「大輝くん、お昼作ったんだけれど、食べられないものとかある?」

「ないっす!」

 大輝はきらきらした笑顔で母の呼びかけに答え、それから父と話を始めてしまった。
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