惨夢
第二夜
「……っ!」
熱いものに触れたみたいに、びくりと身体が跳ねて目を覚ました。
一瞬、ここがどこなのか分からなくて戸惑う。
(わたしの部屋……?)
見慣れた天井に柔らかい布団の質感。
確かめるように触れながらベッドから下りる。
「あれ……?」
寝た気がしないけれど眠気なんてなかった。
それよりも大きな困惑が拭い去れない。
いったい、いつの間に家へ帰ってきたのだろう?
昨晩のことはよく覚えている。
柚や夏樹くんに誘われ、合流した朝陽くんと高月くんも一緒に深夜の学校へ忍び込んだ。
プールで怪談を試したら本当に幽霊が現れて、わたしたちは校舎に閉じ込められた。
まず夏樹くんが殺されて、柚や高月くんの安否は分からないまま、わたしも殺された。
朝陽くんも恐らくは────。
「夢だったの?」
思わず怪訝な呟きがこぼれる。
現に今生きていることを考えると、自ずとその結論に落ち着く。
目にした残酷な光景も、身体を断ち切った鉈の感触も激痛も、この上なくリアルだったけれど。
そんなことを考えていたとき、不意に左腕に鋭い痛みが走った。
「痛っ」
慌てて袖を捲り、驚いて目を見張った。
「何これ!?」
腕の内側に5本の切り傷が刻まれていたのだ。
どれも3センチくらいの大きさでぱっくりと赤い。深い引っかき傷のようだ。
そのうちのひとつが、シュウ……と小さな音を立てながら消えようとしている。
「い、痛った……っ! なに!?」