惨夢

「…………」

 みんなが口を(つぐ)んだ。
 また、沈黙が落ちる。

 どれもこれも憶測の域を出ないことばかりで、結局は不確実な可能性の中から淘汰(とうた)していくしかない。

 だけど、少し疲れてきてしまった。

 冷静なふりをしていても、端の方へ追いやっていた不安がふと息を吹き返すたび、落ち着かない感情に(さいな)まれることになる。

「……残機」

 ぽつりと夏樹くんがこぼした。

 落とした視線の先に、袖口を捲り上げた自身の腕がある。

 引っかき傷みたいな鋭い赤色の線が3本、視界に飛び込んでくる。

「増やす方法ないのかな」

「そんなことしたって……」

 口にしかけた言葉を、柚は躊躇(ためら)いがちに飲み込んだ。

 そんなことしたって、やっぱりそれはただの延命に過ぎない。
 根本的な解決にはならない。

 きっとみんながそう思ったし、彼自身も分かっていると思う。

「それだったら、終わらせる方法考えた方がいいよね。この悪夢自体を」

 朝陽くんの言う通りだ。
 実際のところ、それが最優先事項だろう。

 残機は5で、死ねば減るけれど生き延びても増えはしない。
 つまり“終わり”がないのだ。

 鍵を見つけ出して夢から脱出することは確かに大事。
 だけど、それだけを繰り返していても結局は時間の問題だ。

 いつまでも都合よく生きながらえたりはできない。
 そのうち残機を失って死ぬだろう。

 わたしたちはじわじわと死に近づいている。
 じわじわと、殺されている。

「どうしたら終わらせられるんだろう……」

「“囚われた”って言ってたよな、朔。それって……俺たちは悪夢に閉じ込められたってこと?」

 そう尋ねた朝陽くんをしばらく見据えていた高月くんは、ややあって何も言わずに目を伏せた。

 積極的に肯定はしたくないけれど、否定できない。
 彼の言葉を認めたことを意味する反応だった。

「なに……。あたしたちは呪われた、みたいな話?」

 柚が視線を彷徨わせながら言う。
 その言葉にぞくりと背筋が冷たくなった。

「そんな」

「え……。で、結局どうしたらいいんだよ」
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