惨夢
思わぬ言葉に驚いた。
その横顔に先ほどまでの邪悪な色は見受けられない。
「……あたし、余裕なくて。あんなひどい態度とっちゃった」
「柚……」
「本当は分かってる。あたしが悪い。知らなかったけど、こんなことに巻き込んだのはあたしだもん。花鈴にも申し訳ないと思ってる」
気づいたらわたしは首を横に振っていた。
“怖い”という感情はもうなくなっていた。
きっかけは確かに柚だったかもしれないけれど、だからって彼女を責めるのはお門違いだと思う。
そんなことをしたって何も生み出さないし、そもそも柚だけに責任があるわけじゃない。
「最低なこと言ったし……ちゃんと謝らなきゃな」
いくらか冷静さを取り戻したのだろう。
正直、すごく安心した。
柚がそのことにちゃんと気づいていて。分かってくれていて。反省してくれていて。
それなら、きっともうこれ以上ばらばらになることもない。
押し寄せていた不安感から解放されて心が軽くなったのを感じながら「うん」と頷くと、ふと柚は足元に視線を落とした。
「終わらせる方法かぁ……」
高月くんの言っていたことを思い出しているのだろう。
実のところはしっかりと響いていたみたいだ。
「どうすればいいんだろう?」
「んー……。てか、今思ったけど、あの裏サイトって誰が書いたんだろうね? “願いを叶えてくれる”とかそんな嘘」
その内容に関しては、まず間違いなく“犠牲者”を誘い込むためのものだったのだと思う。
願いを叶えてくれる、なんて耳触りのいい文句をぶら下げておけば、柚みたいに好奇心旺盛な子を簡単に釣れる。
あるいは何かに縋りたい子のことだって誘い込める。
いずれにしても、これほど恐ろしい展開が待っているだなんてとても予想できないだろう。
最初はわたしもそうだった。