惨夢
今いる南校舎側から探していくことにした。
教室を出てすぐ隣、西側の一番端にあるA組の教室へ向かうと、取っ手のくぼみに指をかける。
ガタッ、と揺れるだけで動かない。
いちいち落胆している暇もなかった。
わたしたちの教室であるB組を通り過ぎ、次にC組へ向かう。
今のところ、校舎内はかなり静かなものだった。
化け物の気配はない。明かりを振り向けても、異変は見当たらない。
C組の教室前へ来ると、先ほどの要領で扉を引いた。
今度は抵抗なく滑らかにスライドしてくれる。
(開いた)
中に身体を滑り込ませると、素早く扉を閉めた。
まずは教室前方を調べていく。
「……何、これ」
掲示板に歩み寄って“それ”を目にしたとき、ぞくりとした。
貼り出されているプリントなどの掲示物、その文字がすべて文字化けしているのだ。
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まったく読めないものの、それでもとにかく気味が悪かった。
昨晩に比べれば、全然大したことのない怪奇現象だけれど。
「!」
ふと教卓の上をライトで照らしたとき、メモが置いてあることに気がついた。
はっとして手に取る。
“呪い殺す”。
到底穏やかではない恨みの込もった内容だった。
眉を寄せてしまう。
たとえば、ことの重大さをまったく理解していない子どもが軽々しく口にする「死ね」という言葉とは、意味合いは同じでも明らかに重みが違っていた。
だからこそ現実味のない言葉でも真に受けて信じられた。
実際、自分が呪いの渦中にいる、というのもあって。
「…………」
指先に力が込もった。
メモがたわんでよれる。
これは白石芳乃の言葉だ。
これだけじゃなく、今まで目の当たりにしてきた文言すべて、彼女の言葉なのだ。