愛より深く奥底へ 〜救国の死神将軍は滅亡の王女を執愛する〜
序章
「俺を憎め」
彼はそう言った。
どうしてそんなことを言うのか、エルシェにはわからなかった。
「忘れられるくらいなら、憎まれたほうがいい」
男は皮肉な笑みを浮かべた。
彼はエルシェを石牢の中の固いベッドに押し倒した。
彼女には知識がなく、彼の意図がわからなかった。ただ、怖いことが起きる予感だけがあった。
なのに、男の熱い瞳を見ると抵抗する気力をなくしてしまう。
右目は金、左目は銀。
美しい顔立ちを彩る彼の黒髪が、差し込んだ月光に揺れる。
どこかで見たことがあるような気がする。
遠いどこかで、温かな気持ちになった気がする。
彼女の郷愁など一顧だにせず、彼はエルシェの唇を奪った。
その感触に、彼女はどうしたらいいのかわからない。幼いころに、愛し合う男女はキスをするのだと聞いたことを思い出した。
彼女が思い描くキスは唇が触れるだけのものだ。
だが、彼はそうではなかった。唇を割って舌が侵入し、彼女のそれを絡めとる。獲物をとらえた獰猛な獣のように、彼女を乱す。
こんな深く激しい口づけがあるなど、彼女は知らなかった。
初めて会った人なのに。
わけがわからず、彼のされるがままに翻弄される。
そうして、彼女は彼に暴かれた。
「お前を奪った男はヒルデブラントだ。忘れるな」
彼の刻む苦痛と快楽に、言葉が遠く響いた。
彼はそう言った。
どうしてそんなことを言うのか、エルシェにはわからなかった。
「忘れられるくらいなら、憎まれたほうがいい」
男は皮肉な笑みを浮かべた。
彼はエルシェを石牢の中の固いベッドに押し倒した。
彼女には知識がなく、彼の意図がわからなかった。ただ、怖いことが起きる予感だけがあった。
なのに、男の熱い瞳を見ると抵抗する気力をなくしてしまう。
右目は金、左目は銀。
美しい顔立ちを彩る彼の黒髪が、差し込んだ月光に揺れる。
どこかで見たことがあるような気がする。
遠いどこかで、温かな気持ちになった気がする。
彼女の郷愁など一顧だにせず、彼はエルシェの唇を奪った。
その感触に、彼女はどうしたらいいのかわからない。幼いころに、愛し合う男女はキスをするのだと聞いたことを思い出した。
彼女が思い描くキスは唇が触れるだけのものだ。
だが、彼はそうではなかった。唇を割って舌が侵入し、彼女のそれを絡めとる。獲物をとらえた獰猛な獣のように、彼女を乱す。
こんな深く激しい口づけがあるなど、彼女は知らなかった。
初めて会った人なのに。
わけがわからず、彼のされるがままに翻弄される。
そうして、彼女は彼に暴かれた。
「お前を奪った男はヒルデブラントだ。忘れるな」
彼の刻む苦痛と快楽に、言葉が遠く響いた。