愛より深く奥底へ 〜救国の死神将軍は滅亡の王女を執愛する〜
ヒルデブラントは暗殺を依頼されるたび、命の選別をした。
味方になりそうな者には暗殺されたふりをしてもらい、奸臣でしかないと判断した者は容赦なく命を奪った。
レギーはそのことになにも言わなかった。
自分たちが歩むのは血にまみれた道だと、彼もまた承知していたのだ。
ヒルデブラントとレギーはさらに民衆や貴族、兵士の中からも順調に人員を増やし、反乱軍を組織した。
居酒屋の地下にいるレギーに会うと、ヒルデブラントは言った。
「機が熟したようだ」
「お前はいつも唐突だな」
くつくつとレギーは笑う。
「よかろう。では今夜だ」
レギーは椅子から立ち上がった。
「指揮は任せろ。お前は思うように動け」
「ありがたく存じます」
ヒルデブラントは頭を下げた。
「神はよほど皮肉がお好きと見える。今夜、お前はまさに救国の将軍となる。この国を、ハリクスの横暴から救うのだ」
レギーの言葉に、ヒルデブラントは金銀の目を妖しく光らせた。
***
思いもしなかった話に、エルシェはただ呆然とヒルデブラントを見た。
閉じ込められていた彼女には、戦争も愛も遠い話だった。
それなのに国の存亡をかけた話を聞かされ、その動機が自分だというのだ。戸惑わないわけがなかった。
「レギーは各地の領主と通じていた。王都での蜂起より先に伝令を飛ばした。王を救うために来る軍はなく、王宮は我らが占拠した」
「それでいいのではありませんか」
ヒルデブラントは無表情で彼女を見返す。
「あなたが命を落とす必要など、どこにも感じません」
エルシェは言う。
味方になりそうな者には暗殺されたふりをしてもらい、奸臣でしかないと判断した者は容赦なく命を奪った。
レギーはそのことになにも言わなかった。
自分たちが歩むのは血にまみれた道だと、彼もまた承知していたのだ。
ヒルデブラントとレギーはさらに民衆や貴族、兵士の中からも順調に人員を増やし、反乱軍を組織した。
居酒屋の地下にいるレギーに会うと、ヒルデブラントは言った。
「機が熟したようだ」
「お前はいつも唐突だな」
くつくつとレギーは笑う。
「よかろう。では今夜だ」
レギーは椅子から立ち上がった。
「指揮は任せろ。お前は思うように動け」
「ありがたく存じます」
ヒルデブラントは頭を下げた。
「神はよほど皮肉がお好きと見える。今夜、お前はまさに救国の将軍となる。この国を、ハリクスの横暴から救うのだ」
レギーの言葉に、ヒルデブラントは金銀の目を妖しく光らせた。
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思いもしなかった話に、エルシェはただ呆然とヒルデブラントを見た。
閉じ込められていた彼女には、戦争も愛も遠い話だった。
それなのに国の存亡をかけた話を聞かされ、その動機が自分だというのだ。戸惑わないわけがなかった。
「レギーは各地の領主と通じていた。王都での蜂起より先に伝令を飛ばした。王を救うために来る軍はなく、王宮は我らが占拠した」
「それでいいのではありませんか」
ヒルデブラントは無表情で彼女を見返す。
「あなたが命を落とす必要など、どこにも感じません」
エルシェは言う。