愛より深く奥底へ 〜救国の死神将軍は滅亡の王女を執愛する〜
がっ! と音がして、ヒルデブラントが倒れた。
「ヒルデブラント様!」
エルシェは悲鳴に似た声を上げた。
「逆賊が!」
ハリクスがとどめを刺そうと剣を取り上げたとき。
ゼンナがハリクスに突進した。
助走したぶん、威力は増していた。
振り上げた姿勢のまま、ハリクスは城壁を超えた。
「うああああ!」
悲鳴が尾をひいたのち、つぶれるような落下音が響いた。
ヒルデブラントは体を起こした。
「ご無事ですか!?」
エルシェが彼に駆け寄る。
「大丈夫のようだ」
ヒルデブラントは懐に手を入れた。
取り出されたのは、チェーンで繋がれた金属製のケースだ。その中心がへこんでいる。
「これは……?」
ヒルデブラントがえぐられたケースを開けると、薔薇の花のしおりが夜目にも赤く華やいだ。
「あなたが下さったしおりです。あなたが私をお守り下さった」
ヒルデブラントの言葉に、エルシェはなにも言えずに涙ぐんだ。
ただ喜びを伝えたいだけだった薔薇のしおりが、巡り巡って彼を助けた。当時のエルシェには予想もしなかったことだ。
「ご無事でよろしゅうございました」
ゼンナの安堵の声が二人に届いた。
エルシェたちが振り返ると、ゼンナが城壁のふちに立っていた。
「やめろ!」
察したヒルデブラントが叫ぶ。
「私は多くの人を苦しめました。あなたが殿下を、国を救うのを見届けました。潮時でございましょう」
「やめてください」
エルシェもまたゼンナを止める。が、ゼンナは首を振る。
「陛下を弑した責任をとらねばなりません」
「ヒルデブラント様!」
エルシェは悲鳴に似た声を上げた。
「逆賊が!」
ハリクスがとどめを刺そうと剣を取り上げたとき。
ゼンナがハリクスに突進した。
助走したぶん、威力は増していた。
振り上げた姿勢のまま、ハリクスは城壁を超えた。
「うああああ!」
悲鳴が尾をひいたのち、つぶれるような落下音が響いた。
ヒルデブラントは体を起こした。
「ご無事ですか!?」
エルシェが彼に駆け寄る。
「大丈夫のようだ」
ヒルデブラントは懐に手を入れた。
取り出されたのは、チェーンで繋がれた金属製のケースだ。その中心がへこんでいる。
「これは……?」
ヒルデブラントがえぐられたケースを開けると、薔薇の花のしおりが夜目にも赤く華やいだ。
「あなたが下さったしおりです。あなたが私をお守り下さった」
ヒルデブラントの言葉に、エルシェはなにも言えずに涙ぐんだ。
ただ喜びを伝えたいだけだった薔薇のしおりが、巡り巡って彼を助けた。当時のエルシェには予想もしなかったことだ。
「ご無事でよろしゅうございました」
ゼンナの安堵の声が二人に届いた。
エルシェたちが振り返ると、ゼンナが城壁のふちに立っていた。
「やめろ!」
察したヒルデブラントが叫ぶ。
「私は多くの人を苦しめました。あなたが殿下を、国を救うのを見届けました。潮時でございましょう」
「やめてください」
エルシェもまたゼンナを止める。が、ゼンナは首を振る。
「陛下を弑した責任をとらねばなりません」