ビターなフェロモン (短)

「なんか、体が熱いかも……」


そう感じたのは放課後。

朝は元気だったんだけど、昼ごろから体が重くなっていって、今は頭が痛い。

顔や首を触ると、むわっと温かい湯気みたいなものを感じる。

こんなジトジトした日に、まさか風邪……?


「ちょっと、休憩……」


最後の授業も終わったし、後は帰るだけ……なんだけど。

風邪を意識した途端にしんどくなってきて、動けそうにない。


ちょっと寝たら回復するかな?


鞄を机上に置き、枕代わりにして伏せる。

多少ゴツゴツするけど……仕方ない。


「……体、熱いなぁ」


しまった。

顔を伏せたら熱気がこもって、余計に熱くなってきた。


これじゃ寝れたもんじゃないよ――と顔を上げた、その時だった。


「ん」

「……っ」


目の前に、ズイッと現れたのは紙パックのジュース。

それを持っていたのは――蓮人くん。
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