ビターなフェロモン (短)
「え、と……」
「飲めよ。冷たいもん飲んだら、少しはマシになるかもしれないだろ」
「!」
蓮人くん、私が調子を崩してるって知ってたんだ。
それで、わざわざジュースを……?
「あ、りがと……っ」
「……ん」
私がちゃんと口でお礼を言ったから驚いたのか、蓮人くんは少し時間をかけて返事をした。
ガラッ
放課後だから切られてしまったクーラーの代わりに、蓮人くんが窓を開けてくれる。
すると、外から入るじめったい風が吹きこんで来た……というのに。
蓮人くんのなびく髪はさらりとしていて……爽やかに見える。
髪が柔らかいのかな? 猫毛だから?
「おい、早く受け取れよ」
「あ、ご、ごめ……」
外装に水滴がつき始めたジュースに手を伸ばす。
そして、私の指とジュースを握る蓮人くんの指が少しだけ触れた、
その時だった。
バチッ
「きゃっ!」
「っ⁉」
二人の間に、突然あがった火花。
まるで感電したかのようなビリビリした刺激が、指から体を駆け巡った。