ビターなフェロモン (短)
「おい、桃子! どこが痛いんだよ!」
「わ、から……」
分からない――と答えた時。
蓮人くんが私の椅子の向きを変え、床にひざまずく自分と向き合う形にした。
苦しむ私の様子を、下から覗き込む蓮人くん。
「ここが痛いのか?」と色んな場所を触られると……不思議なことに、蓮人くんに触られた場所が、熱くなって痛みを伴った。
さらに――
「――っ! おい、桃子っ」
「ふ、ぇ……?」
ズクンッ、と更に体の熱を高ぶらせた時。
すぐさま反応したのは、蓮人くんの方だった。
「はぁ、……っ。なんだ、これ」
頬を紅潮させ、息が荒くなる蓮人くん。
私と同じく、苦しそうにもがいている。
「蓮人、くん……っ?」
「やめろ。今、俺の名前を呼ぶな」
まるで何かと戦っているように、蓮人くんは口に手をあてて私から視線をそらしている。