ビターなフェロモン (短)

まさか、私よりも苦しい?

蓮人くん、危ない状態なのかも……っ!


「だ、誰か……、先生、を……」


だけど、見渡しても誰もいない。


そういえば今日は各委員会会議があるって言ってた。

それに皐月くんも出席するから「今日は別々で帰ろう」って言われたんだし。


「……っ。俺より、桃子は大丈夫なのか」

「さっきよりは、だいぶ……。でも今、私に……触らないで」

「!」


さっき蓮人くんに触られた所から痛みが生じた。

でも蓮人くんに触られなくなったら、だんだん痛みが引いて行った。

ということは、

きっと今は、蓮人くんに触られない方がいい――って。


そう思っているのに。


「ね、ぇ……蓮人くん。なんか、体が……おかしいの」

「……おかしい?」


朝、教室に入った時のように。

髪から汗が垂れている蓮人くんは、うっとうしいのか前髪をグイッとかき上げた。

すると彼の吊り上がった目がハッキリと現れて……視線が、私と強く絡まる。


ドクンッ


「きゃぅ――っ!」


目が合っただけなのに、強烈に心臓が反応する。

それと同時に、脳裏にとんでもない思考が生まれ始めた。

それは――



【 蓮人くんがほしい 】


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