ビターなフェロモン (短)

「おい、桃子!」

「へ、あ……」


目の前には、蓮人くん。

彼の手は私の肩にあって、倒れないように支えてくれている。

もう一つの手は……何も持っていない、フリーだ。


あぁ、じゃあさ蓮人くん。

その手を私に伸ばしてさ、私がほしがってるところに――


「ふれて、ほしい……」

「え?」

「……あ、」


あれ?
私……今、何を言った?


「桃子? どこか触ってほしいところあるのか? どこが痛いんだ?」

「や、あの……っ」


違う、さっきのは私じゃない。

私の気持ちじゃなくて、他の誰かだよっ。


「桃子。これから順番に触っていくから、痛いところがあったら言えよ」

「ひゃ、う……っ!」


蓮人くんが足の先から順番に、私の体に触れていく。
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