ビターなフェロモン (短)

「あ、ぅ、……ぅうっ」

「……変な声だすな」

「ごめ、ん……っ」


なにこれ、変だよ、変すぎるよ。

蓮人くんは私を心配して体を触っているだけなのに、なぜか私は「別のこと」を期待しちゃってる。

自分の体を少しずつ動かして、蓮人くんに触ってほしい場所へ自ら誘導しているかのような……。


「……おい、口の中まで調べろって?」

「へ、あ……っ!」


気付けば私は、私の頬に手を添えていた蓮人くんの指にむかって、物欲しそうに口を開けていた。

しかも蓮人くんが喋った瞬間、指がさらに私の口へ近づいたから……ぺろっ、と。思わず舐めてしまう。


「っ!」

「あ、ごめ……わた、しっ」


なめられた瞬間、蓮人くんは怒るわけでもなく、そして拒否をするわけでもなく。

ただ顔を歪め、眉間にシワを寄せる。


まるで何かを耐えているような表情に、私はまた熱を高ぶらせてしまって……。


「お願い、蓮人くん」


お願い、おねがい。

私に――


「キスして……」

「っ!」

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