ビターなフェロモン (短)
うそ、伝わったの……?
さっきの私、かなり言葉が足りなかったと思うけど……。
それなのに、蓮人くん分かってくれたんだ。
「じゃ」と言って教室を後にする蓮人くん。
その後ろ姿を見ていたら、強い風が教室に拭きこんだ。
強風にさたわれたカーテンが、再び私を覆う。
すると、このカーテンに隠れてさっきまで蓮人くんとキスしていたことを思い出して、
思い出して、しまって……
『ん、桃――』
「~っ」
また、顔が赤くなった。
「もう、私のばか……っ」
本当に、なんてことを……っ。
カ~ッと赤面していると、スマホが振動した。
画面を見ると、皐月くんのメール受信通知。
開くと――
<蓮人から聞いたよ、調子が悪いんだって? あと少しで委員会が終わるから、教室で待っててね。一緒に帰ろう>
「蓮人くん、私のために皐月くんに連絡してくれたんだ……」