ビターなフェロモン (短)

その場しのぎの飢えに、蓮人くんを巻き込んでしまったの?

もし本当にそうだとしたら……次、蓮人くんの顔を見られないよ。


「キスしたくなる衝動に駆られるくらい、いやらしい子だったなんて……」


早く蓮人に会って話を聞きたい、のに、聞けないジレンマ。

「あ~」と頭を抱えて悩んでいると――


「お待たせ桃子~って、大丈夫? 本当に調子悪そうだね。歩ける?」

「さ、皐月くん……」


委員会が終わったのか、プリントを持った皐月くんが教室に入って来た。

私は机にうつぶせていて……はたから見ると、確かに調子が悪そうだ。


「顔が真っ青だよ、貧血? 待ってて、何か飲み物を、」

「あ、それなら蓮人くんが買ってきてくれたジュースがあるから、大丈夫だよ」

「蓮人が?」


一度床に落ちたからか、角が一部凹んでいるジュース。

私が好きな抹茶オレだ。暑さで痛まないうちに、早く飲もう。
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