ビターなフェロモン (短)

「そういえば……」


蓮人くん、皐月くんに話してないよね?

普通、話さないよね……?


色んなことにドギマギしながら、こちらに来る蓮人くんに挨拶をする。


「れ、蓮人くん、おはよう」

「……はよ」


うん、いつも通り。

むしろ、きちんと挨拶出来たから、いつもより良いぐらい。


(※いつも
「お、おおおお、は……蓮人、くん」)


だけど、ささいな変化というのは、いつも一緒にいる仲だからこそわかるもので。

皐月くんが「桃子が蓮人と普通に喋ってる」と驚いた。


「わ、私だって喋る時くらいあるよ。ね、蓮人くん」

「……さぁ」


ニッと笑って、すたこらさっさと先を歩く蓮人くん。


え、ちょ、なに!

なになに、その意味深な発言は!

その意味ありげな含み笑いは……っ!


「蓮人が笑った……。低血圧だから、いつも朝は不機嫌なのに珍しいね」

「……っ」
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