ビターなフェロモン (短)
「そう言わずにさあ~! 腹立つくらい上手いじゃん! だから頼むって!」

「……皐月も上手いけど?」


「え」と言ったのは皐月くん。

まさか自分に白羽の矢が立つとは思わなかったのか、顔は笑っているけど、口元が若干ひくついている。


「手伝ってあげたいのは山々なんだけど……ほら、この天気でしょ?」


言いながら、皐月くんは照り付ける太陽を指した。

あぁ、バスケって汗かくよね……。


私たちの誰もが体育館に近づかない事に我慢の限界が来たのか、男子は「もういいっての!」とイノシシのように突っ込んで来た。

そして、私の手をギュッと掴む。


……ん?

私⁉


「お前らがやらないってんなら、この子に手伝ってもらうわ」

「いや、桃子は女子だし。それにバスケ……出来る?」

「で、きない……っ」


皐月くんに聞かれて、首を振って即答する。

既に人見知りは発動されていて、皐月くんとすら上手く話すことができなくなっている。

そんな中、腕を掴まれるなんて……むりっ。
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