ビターなフェロモン (短)
「ん? 桃子?」

「あ、ごめん。なんでもないよ」


いけない。蓮人くんのことを考えて、ぼさっとしちゃってた。


頭の中の雑念を振り払い、蓮人くんの後を追うように前へ進む。


「皐月くん、行こう。授業に遅れちゃう」

「え、あ……うん」


その時、皐月くんも何か考え事をしていたのか。ワンテンポ遅れて返事をした。

だけど私の頭の中は、払ったばかりの雑念が再び集合していて……考えるのは、蓮人くんの事ばかり。


だって、だってさぁ。

うっかりしてたけど、あの二人は同じ家に住んでるわけで……。

ついポロッと、とか。
うっかり、とか。

そんなことがあって「実はバレて」たり……しないよね?

そもそも皐月くんが知ってたら、いま普通に話してないだろうし……蓮人くんは内緒にしてくれてるハズ、たぶん。
< 30 / 75 >

この作品をシェア

pagetop