ビターなフェロモン (短)

でも今日の蓮人くんがちょっと意地悪だから、つい心配になる。

私の好きな人=皐月くんに知られていないか、すごく気になっちゃうよ。


「う~……」

「……」


考える事が頭の中でグルグル回って……。

やっぱりソックスが濡れていたことも、隣の皐月くんが曇った表情をしていたことにも気づかなかった。


そればかりか。


色々なことに見えていない私が、その時に限って見つめていたのは――

既に遠くに歩いてしまったため姿が見えなくなった、蓮人くんなのだった。



ੈ✩



上の空で迎えた一時間目は、なんと体育。

二組合同で行う時は大抵、女子はテニス、男子はサッカー……なんだけど。


「この雨だからなー、体育館で男女ともバスケするぞー」


なんて言われて。

超絶運動音痴の私は、皆の邪魔にならないようにコートの端でボールを追っていた。
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