ビターなフェロモン (短)
「蓮人、くん……蓮人くんッ」
「わ、ちょ! 桃子、抱き着くな」
「やだ、そんな事いわないで……ぎゅって、してよ」
「!」
蓮人くんの首に手を回し、ベッドに引き寄せる。
あぁ、私……。
「ぎゅってして」、なんて。
やっぱり自分が自分じゃなくなってる気がして――怖くなって、涙が出た。
「うぅ~」
「桃子……」
蓮人くんは私の要求に応え、ぎゅッと抱きしめ返してくれる。
それだけで体に電流が走るような、高ぶる刺激を覚えた。
「蓮人くん……っ」
蓮人くん、すごく優しく抱きしめてくれてる……。
おかしくなってる私に何も言わず、ただ黙って受け止めてくれてる。
ごめん、ごめんね蓮人くん。
私が変になっちゃったばかりに、迷惑かけて――
「ごめ、なさ……っ」
嗚咽に混じって謝ると、蓮人くんは抱きしめたまま私の頭を撫でた。
そして「分かってる」と。落ち着いた声をだす。