ビターなフェロモン (短)

「桃子の顔を見てたら、さっきのこと思い出した……ってわけで、ちょっとトイレに行ってくる」

「〝ってわけで〟って……」

「だからっ」


気持ちよくなりにいくって、そう言ってんの――


「!」


あぁそういうこと!と納得した後、顔を赤くした私を見て。

蓮人くんは、片方の眉を下げて笑った。


「あ~だからさ、俺は充分に恩恵受けてるから。本当に気にするな」

「え、でも」

「やば、もう授業おわる。人が多くなる前に行って来る」

「ちょ、蓮人くん!」


パシンっと勢いよくドアが閉まり、一気に廊下をかけていく足音を聞くと……なんだか肩の力が抜けた。

だって蓮人くん、たぶん私を気遣ってるだけなんだろうけど……。


「さっきのって、蓮人くんの……が、元気になったって事だよね?」


優しい蓮人くんの事だから、本当にトイレは行ってないと思う。

全て、私に責任を感じさせないウソ――でも、だとしても。

その伝え方が、アレっていうのは……


「やっぱり蓮人くんって、大胆すぎる……っ」


一気に男の子の世界を見てしまったようで、頭がクラクラしてくる。
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