ビターなフェロモン (短)

「わ! ビックリするなぁ」

「俺の教室に運んどいて。お前の代わりにバスケするんだから、それくらいいいだろ」

「はいはい。……にしても鞄、軽すぎない?」


鞄の取っ手を持ってプラプラ振る皐月くんに、蓮人くんは「ふん」と鼻を鳴らす。

その後、男子と一緒に体育館へ入って行った。


「じゃあ俺たちも行こうか」

「う、うん」


去り際に、もう一度体育館へ目をやる。

招いた男子が喜びながらTシャツを渡すと、蓮人くんはためらうことなく、その場で着替え始めた。

もちろん、イケメンの生着替えに周りの女子が無反応なわけがなく……


「キャー!」と。


体育館の外にまで、黄色い悲鳴が響き渡った。


その声を、背中で聞いた私たち。

皐月くんは「蓮人はモテるね」と笑うけど……皐月くんもイケメンだし、何より優しい。

それに雰囲気も柔らかいから、蓮人くんよりモテているって知らないのかな。
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