ビターなフェロモン (短)

好きって気持ちを自覚したら、隠しておくわけにもいかなくて。

この先に桃子がいるんだと思うと、妙に心がソワソワした。


だけど絶対に桃子に触らないようにしないと――と意を決し、保健室へ足を踏み入れる。


「おい桃子」


でも声をかけても返事がない。

聞こえなかったか?と、さっきよりも大きな声を出そうと息を吸い込んだ時だった。


「……あぶね、寝てるのか」


規則正しい寝息をたてながら、桃子は眠りについていた。

慌てて口を閉じて、音を立てずに近寄る。


「スー――」

「よく寝てるな……ん?」


今……なんで桃子からフェロモンが出てるんだ?

俺と桃子の接触はなかったはずだろ?


今、桃子の顔を見ると急に体が熱くなった。

だから「フェロモンか」と思ったけど……俺と違って、桃子はスヤスヤ寝ている。

ってことは……。


もしかして今、フェロモンは出てないのか?

じゃあ俺の火照りって――
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