ビターなフェロモン (短)
「!」
さっき「蓮人くん」の名前だったよね?
血がでてるって、どういうこと?
何かあったの?
「蓮人、何したんだろう。ね、桃子」
「ごめん、皐月くん。私……いくね!」
「え、桃子!」
入ったら危ないかもよ?と私を心配する皐月くんの手をふりほどき、教室の扉を開ける。
ガラッ
すると左目の上を切り、血を流している蓮人くんと目が合った。
「れ、蓮人くん……」
「そんな急いで何してんだよ、危ないだろ」
「あ、危ないって……」
目の上から血を流してる人に言われたくないよ……。
「切っちゃったのっ?」
「風でデカいカレンダーが落ちただけ。ちょうど真下にいて、運が悪かった」
この一番固いところに当たってさ、と落ちているカレンダーを見つめる蓮人くん。
血が出ている割には軽傷なんだね、よかった。
「でも保健室に行かなきゃ。早く、」
「おっと」
スカッ
私が蓮人くんの手を引こうとすると、蓮人くんが華麗に避けた。
あ、そうか。肌と肌が触れちゃいけないっていうのに、すっかり忘れてた。