ビターなフェロモン (短)

「皐月くん、どうかした?」

「んーん。今日も暑いね、桃子」

「ふふ、急だね」


そうして鞄を受け取る……のだけど。

その時に、指と指が少しだけ触れ合った。

ほんの少し、霞める程度だけど。


だけど、私からすると……


〝皐月くんに片想いをしている私〟からすると、指が触れただけですごく嬉しい。

触れた指から一気に熱が全身をめぐり、ポポポと顔が赤くなった。


「桃子、どうかした?」

「う、ううん。今日も暑いね、皐月くん」

「はは、急だね」


体育館でボールが跳ねる音を遠くに聞きながら、二人で校舎を目指す。

その間、心臓の跳ねる音が皐月くんに聞こえてしまわないかと心配になり、何度も何度も、皐月くんの顔を見てしまった。



ੈ✩


< 7 / 75 >

この作品をシェア

pagetop