ビターなフェロモン (短)
「皐月くん、どうかした?」
「んーん。今日も暑いね、桃子」
「ふふ、急だね」
そうして鞄を受け取る……のだけど。
その時に、指と指が少しだけ触れ合った。
ほんの少し、霞める程度だけど。
だけど、私からすると……
〝皐月くんに片想いをしている私〟からすると、指が触れただけですごく嬉しい。
触れた指から一気に熱が全身をめぐり、ポポポと顔が赤くなった。
「桃子、どうかした?」
「う、ううん。今日も暑いね、皐月くん」
「はは、急だね」
体育館でボールが跳ねる音を遠くに聞きながら、二人で校舎を目指す。
その間、心臓の跳ねる音が皐月くんに聞こえてしまわないかと心配になり、何度も何度も、皐月くんの顔を見てしまった。
ੈ✩