彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】
『海外出張の間に氷室商事へ研修に行く気満々なのはわかっていた。義姉さんに釘を刺されて今回は我慢した。だが……お前どこの部署にいるんだ?』
わー、すごい。ばれてないの?さすが、梶原副室長。
というか、企画室の方達すごい。あそこは役員フロアに部屋があるから、直行エレベーターだし、見られてないのかもしれない。朝も早めに行っている。
「内緒」
『……内緒だと?俺に内緒って言ったのか?菜摘、覚えてろよ。帰ったらおしおきだ』
そんなのいつものことじゃない。ぜーんぜん、びっくりしない。
彼は私のことを自由にさせつつ、常に他人といるのをそこはかとなく見ている。別に嫌じゃないし、信用しているから許してきた。
だからといって、私は彼に迎合しない。勝手にするときはする。これが森川菜摘だとわかっているはずだ。