彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】
「森川さん、俊樹さんがまた大型契約を取って急遽帰国が決まった。約束まであと三日だった。社長には頼んであったんだけど、会長が秘書の菱沼さんを取り戻したくてそっちからも圧力があったらしいんだ。こちらも君に謝るしかなくなった」
大型契約っておそらくは相模さんが言っていたハラルの取引だ。うまくいったのね。さすが俊樹さん。褒めてあげなくちゃ。ってそんなこといってる場合じゃなかった。
「そうですか。予定より早く切り上げるのは彼の場合いつものことです。私のこともあって、きっとそのうち来るんじゃないかと思ってはいました。いろいろとご協力いただきありがとうございました」
「そう?君も少しは研修できたようだね。お互いにここらが落としどころのようだ。じゃあね」
そういうと、ぶちっと電話が切れた。忙しいんだろう。
後から陽樹専務が顔を出した。周りが皆立ち上がった。