彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】
まさか、そうだったの……。結局彼の手の上で踊らされていたのね。
そう、私は氷室俊樹というすごい人の直属部下だったことを忘れていたかもしれない。
「……俊樹さん……」
「さてと、ふたりで下へ降りる前に専務へ挨拶に行こうか。企画室の皆さん、うちの森川が大変お世話になりました。ひと月後、一緒にこちらへ戻ります。またよろしくお願いします」
彼は深々と頭を下げた。驚いた。私も彼を見て頭を下げた。
「こちらこそどうぞよろしくお願いします」
皆が梶原副室長の返事に合わせて立ち上がり頭を下げてくれた。
コンコンというノックの音がして、ドアが開いた。陽樹専務と京子さんだ。